本展示の構成
オーディオゲームセンター+CCBTは下記の3つの構成で作品を楽しむことができます。
- 音でゲームを楽しむ! オーディオゲーム作品の展示
- スタジオAに3つの作品が展示されています。
- レーシングゲーム「大爆走!オーディオレーシング」
- リズム・アクションゲーム「スクリーミング・ストライクneo」
- オーディオゲーム制作アプリ「Audio AR Game Maker」
- スタジオBに1つの作品が展示されています。
- ストーリーテリング・ホラーゲーム「幽霊のいるところ」
- スタジオAに3つの作品が展示されています。
- 一緒につくる! ハッカソン「音からゲームをつくる」
- 世界の様々な作品をプレイ! オーディオゲーム・アーカイブ+
主催者挨拶
シビック・クリエイティブ・ベース東京[CCBT]のコアプログラムのひとつ「ショーケース」では、創造拠点・ラボ機能を有するCCBTの特徴を活かし、アート&テクノロジーによる表現と、その創作プロセスや技術的背景等を紹介しています。第3回目となる「オーディオゲームセンター+CCBT」では、研究者、プログラマー、キュレーター、障害当事者から成る協働チーム「DDD(Disability Driven Design)Project」をCCBTのパートナーに迎えます。
「オーディオゲーム」は、オンラインを中心に世界各地のクリエイターにより発表され、多様な人々に楽しまれていますが、DDDでは、2017年より「オーディオゲーム」を実際に開発し、多様な人々とプレイするための展覧会やワークショップを開催してきました。DDDが探求するのは、視覚障害のある当事者とともに開発・プレイすることでひろがる、人間の知覚の可能性であると言えます。音だけで空間・物語をゲーム世界として創り出し、さらに、音だけで移動・スピード・状況描写を感じながらゲームをプレイする−−−−。こうした体験は、日々の生活では気づきにくい、音が有する豊かな情報と、音がもたらすわたしたちの想像力を喚起させるでしょう。
「オーディオゲームセンター+CCBT」では、これまでDDDが開発してきた作品の紹介にくわえ、「音からつくる」「音で遊ぶ」ことを実験・思考するラボラトリーとして、様々な取り組みを行います。ハッカソン「音からゲームをつくる」では、ブラインド・ファシリテーターとエンジニア、アーティスト、市民がゲームの創作に挑戦します。出来上がったプロトタイプは、世界各地のオーディオゲームを集めたコーナー「オーディオゲーム・アーカイブ+」にて発表予定です。さらに、会期中には、アート&やテクノロジーによる「アクセシビリティ」や「インクルージョン」を考える機会として、ゲームの体験会や開発者を交えたミートアップなどを開催します。
本プログラムを通じ、テクノロジーと人間の知覚がもたらす、音による表現の楽しさを存分にご体感いただくとともに、「オーディオゲーム」の新たなアイデアの提案や創作機会にも、ぜひ多くのみなさまにご参加いただけますと幸いです。
解説 オーディオゲームセンター+CCBTって何だ?
DDD Project (Disability Driven Design Project)
ゲームは、人をつなぐコミュニケーションツールであるからこそ、「障害」はプレイヤーたちがともに乗り越えるべき対象となる。だからこそ、そこに参加できる人を選ぶ基準は決してないはずだ。
音からつくり、音で遊ぶオーディオゲームは、主に視覚障害者の間で楽しまれてきたゲームの形態である。2017年から始めた「オーディオゲームセンター」の活動は、視覚障害者が中心になりながらも、視覚の有無問わず多くの人がオーディオゲームを楽しめる場をつくる、という趣旨にもとづいている。それは、視覚障害者同士で楽しむ従来のオーディオゲームの世界とは少し異なり、音で構築する世界の入口を晴眼者(目が見える人)たちが教えてもらう、通常とは逆の方向のインクルーシブなプロジェクトだと考えている。
普段、視覚から多くの情報を処理することに慣れている晴眼者は、音の情報も視覚で補完していることが少なくない(たとえば車が通り過ぎる音も、一旦車だと視認したら、その音が消えるまで意識を向けている人は少ないだろう)。だから晴眼者がつくる「音ゲー」も、結局は画面に映っている要素に合わせてリズムをとる、「視覚ゲー」だったりする。裏を返せば、オーディオゲームにおいて大きなハンデを追っているのは、音と遊ぶことに慣れていない晴眼者の方なのだ。
私たちはこれまで、自分たちがつくったゲームをプレイしてもらう場をつくってきた。しかし、今回の「オーディオゲームセンター+CCBT」では、私たちだけでなくこれまで世界各地の先人たちがつくってきたオーディオゲームの展示やハッカソンの開催などを通して、「音からつくり、音で遊ぶ」ことの面白さを感じ、実践する仲間を増やしたいと思っている。その先に、私たちがともに「障害」を乗り越えるための共創の土壌が生まれていくことを願って。
解説 レーシングゲーム「大爆走!オーディオレーシング」
この作品はプレイヤーの進むべき方向を示す「ガイドメロディ」を頼りに、車を走らせるレーシングゲーム。ヘッドフォンの左右から聞こえるメロディを追いかけ、さらに次々に熱弁するレース実況にあわせてハンドルを切りながら、1位を目指します。音から空間を意識し、スピードを想像できれば、迷わずにゴールに辿り着けるはず!
テクニカルノート
- リアルタイム
- ボタンを押した瞬間、即座にキャラクターが動いて音が鳴ると、まるで自分がそのキャラクターとして行動してるような没入感が生まれる。一見簡単なように思えるこの処理は、ボタンからの入力を受け取り、音の再生処理を行ってスピーカーへ信号を送り出す処理を、画面の描画や他の処理と並行しつつ数ミリ秒に間に合うよう工夫されている。
- コンボリューション(畳み込み)
- ある空間で短いパルス音を鳴らした響きを録音しておけば、そのデータと別に録音した音とで畳み込みという処理を行うことで、あたかもその空間で音を鳴らしたように響きをつけられる。録音と同じように響きもまたサンプリングできるのだ。
- 声の合成
- 人の声を人工的に再現する試みは、ケンペレンのふいごで空気を吹き込む機械的なものから、鍵盤を押すとアナログ電気回路で合成するベル研究所のヴォーダーなど長い歴史がある。近年では機械学習の発展に伴い、ほとんど実際の人間の声と区別がつかなくなってきている。キャラクターのセリフが録音ではなく全てリアルタイムに生成される日も近いかも?
「The Bell System technical journal」(1922)出版:American Telephone and Telegraph Company
解説 リズム・アクションゲーム「スクリーミング・ストライクneo」
ルールは、音に合わせて叩くだけ! 叩く爽快感を追求した新感覚オーディオゲーム。敵の来る方向を音で聞き分け、迫ってくる敵をひたすら殴って倒す「ゾンビ編」。そして、音を出しながら飛んでくる板や瓦を自慢のパンチでたたき割る「空飛ぶ瓦編」を楽しめます。
テクニカルノート
- アルゴリズムを聴く
- コンピューターの初期、スピーカーはディスプレイよりも安価で手軽にデバッグできる出力装置だった。プログラマーたちは電気回路にスピーカーを繋げ、流れている信号を直接聴くことで、計算がきちんとできているかを確認していた。これを逆手に、スピーカーに任意のタイミングでパルスを流すようなプログラムを作り、コンピューターで音楽を鳴らす試みが始まった。
- Doornbusch, Paul, Early Computer Music Experiments in Australia and England. Organised Sound. 2017,22(2),297-307
- オブジェクトベースドオーディオ
- ゲームの中では録音された効果音や音楽がタイミングに合わせて鳴っているだけではない。自分と敵やアイテムとの位置関係や種類といったメタデータと音源を組み合わせて音色や定位をリアルタイムに加工している。FPSゲームではこれが自分や相手の位置や向きを知る重要な手掛かりにもなっている。
解説 オーディオゲーム制作アプリ「Audio AR Game Maker」
実空間にバーチャル空間を重ねるAR技術を活用し、スマートフォンなどのデバイスを使って実空間に色々な音を置いてオーディオゲームをつくれる「Audio AR Game Maker」。目が見える人も見えない人も操作できるよう設計されたこのアプリで、仲間とルールを考えながらゲームをつくってみましょう。